名取仁志「嫌悪 」

私にはとても好きではない音楽グループがありました。いや、好きではないではなく、心の底から嫌いでした。

私がたまたまラジオを聞いていたら、その音楽グループの新曲が、ことあるごとに流れてきました。結構な頻度で流れていたのです。

とても嫌いでした。まず何を歌っているのか聞き取れない。そして何ともふざけた歌なのです。何よりグループ名も気に食わない。どの角度からも嫌いでした。

普段なら、見ず知らずの音楽グループのことなんて、どうでもよく意識する対象でもない訳です。他の意識していない事象と同じように流してしまえば良かったのですが、意識をしてしまったものだから仕方がない。その音楽ラジオから流れてくる度に嫌な思いをしていました。

その後、暫くして、急に「そう言えば、あの嫌いな音楽の歌詞は一体何と歌っているのか?」と気になり、インターネットで調べることに。

するとラジオから流れていた私なりに解釈していた歌詞とは、似ても似つかない、全く違うものだということが判明して驚きました。

そして、今はというと、その音楽グループがとても好きなのです。あの自分では解釈できなかった歌詞の衝撃から、どの音楽よりも好きになってしまったのです。それもCDを購入し、毎日聴くぐらい。

何の話かと言いますと、嫌いな尺度が大きければ大きいほど、その問題点を解決できたときに、その嫌いの尺度分、好きの尺度に変わるということです。
それは自分でも驚くくらい、つい数ヶ月前では想像もつかない程なのです。

こうなると、私の今の楽しみは、他に嫌悪感のあるものはないか、となってくる訳です。私の人生を変えてしまう出来事があるかもしれない。

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