「新聞」元川
僕は学生の頃、新聞配達のアルバイトをしていた。
朝4時半に新聞屋に出勤し、高校生の時には自転車で、運転免許証を取得してからは原付で配達していた。
労働時間は約1時間半。時給に換算するとかなりいいバイト代を貰っていたと思う。
そして朝の時間帯は、あまり人がいない。誰にも気兼ねなく配達が出来た。人間関係の悩みは、この新聞配達のバイトではあまりなかったと記憶している。
僕が新聞配達を担当していた地域は、田舎町ではあるものの、民家やお店が密集していた場所だった。日中だったら、人や車で賑やかな場所だ。
しかし配達の時間には、その賑やかさとは反対に、とても静かなのだ。僕はその静かさが大好きだった。
配っていた新聞も何種類かあって、バイトを始めた当初は、間違えて配ったり、不配してしまったりと、結構失敗もしたが、慣れてくるとその失敗も殆どなくなった。
約400軒配達していた新聞の中で、中京スポーツ(東京スポーツと同じ系列)という新聞を1軒だけ配達していた。
他のスポーツ新聞とは違い、その一面記事が毎回面白いのだ。「そんなの嘘だろぉ(笑)」と思うような記事がデカデカと一面を飾る。それも結構な頻度で。
僕は、その新聞を配る前に少し立ち止まり、その新聞の一面をサッと目を通すことを毎日していた。雨の日も雪の日も。楽しみだったのだ。
夜明けの静けさの中で、笑いが込み上げる。それをグッと堪える。もちろんくだらない記事も多い訳だが。
それでも「今日はどんな記事かな?」という楽しみがあった。
そんな学生生活も終わり、社会人になってからは、毎日欠かさず新聞を読んでいる。仕事に必要だったこともあるが、やはり
「今日はどんな記事かな?」
という気持ちは今でも持っている。
だって新聞なのだから。毎日配達されて来る物、それが「新聞」。
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