社説 ▲金曜日の夜▼
いつものように自宅に帰る道すがら、ふと違和感が気になった。そこは普段あまりお客が来ない店で、駐車場が混雑するなどあり得ない。ガラス張りの店舗は、何気なく通りがかりに見ても、常に席が沢山空いている様子がすぐに分かるほどだ。すいているお店というのはすいているなりの理由があるのだろうと勘ぐってしまうものだが、時間が無いなかでの食事を求める場合、すいているお店というのはありがたい存在である。同社のキャッチフレーズ「早い、安い、旨い」が見事に体現されている店舗であり、筆者も時間に追われている時には利用することがある。
そのお店の駐車場に、なんと、警備員が立っていた。違和感の正体だ。あろうことか駐車場が混雑している。思わず二度見三度見するほどに、我が目を疑った。店舗内をガラス越しに見ると、行列が出来ている。あり得ない。一体何事か。もしや。スマホを出した。検索窓に入れたのは、「ソフトバンク 牛丼」。混雑の理由が判った。
今宵見た光景は、配給券と引換に食事の配給を受ける、社会主義国家のようだった。あるいは学校給食の様相か。空の皿を持ち、給食係がおかずを入れてくれる流れの中にいる小学生を彷彿とさせるものだった。ジョージ・オーウェルの小説、『一九八四年』の食事シーンを思い出す。
これは大人のすべき事だろうか。矜持というものは、どこへ行ったのか。「無料」の名のもとに、堂々と踊らされる。滑稽としか言いようがない。しかし渦中の人たちは何も考えないどころか、これ幸運とさえ思っているのだろう。自分の行動を主体的に決めることが出来ず、環境依存型の人間たち。
「無料クーポンがあるんだから、そこ行くでしょ、普通。当然だよ――。」
自分のことを善人だと思い、全てを他責にして生きている。そんな人達が、今宵、全国各地の牛丼屋さんで列をなしていた。勿論、列に並んでも誰一人文句を言わない。善人だから?スマホのゲームアプリが気を紛らわせてくれるから?因みに来月はアイスクリームだそうだ。店舗では、毎週金曜日は出勤体制を厚くして備えているとかいないとか。
あゝ素晴らしいプレミアムフライデー。
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